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2017年 02月 01日

ほうれんそう

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スーパーに食材を買いに行った。

冷凍したほうれん草が終わったから買おうと、野菜コーナーへ。

目についたのが、ふるさとぐんまのホウレンソウ、それも、この季節にはときどき見かけるがまだ買ったことのなかった縮みホウレンソウだ。
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茹でるまでの間水揚げさせようと袋からだして、びっくり。
一袋に二株しか入っていない。でも、ボールに水を張って入れたら・・・
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これは群馬県の厳しい環境の中で、空っ風に耐え、霜の冷たさに耐えながら、首をすくめるようにして育ったので砂がついているかもしれないと注意書きが添えてあった。

茹でてみた。

まず、シンプルに、お浸しで食べてみた。
普段はお浸しというと、おかかをかけてたべるのだが、まずはこのまま、お醤油だけで・・・。
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甘ーい!。茎が甘い。普段は根っこは食べないが、試しに食べてみた、これがまた甘い。

思い出せば、私の母は、ホウレンソウの根っこが好きで、「こんな甘くて美味いものを捨てちゃぁ勿体ない」と言いながら食べていたっけ。


ホウレンソウでもう一つ思い出したことがある。

私の育ったのは群馬県の片田舎の農家だが、その頃農家では「せんぜい畑」と言って宅地の隅か地続きの畑を持っていてそこで自家消費用の野菜などを育てていた。

私が中学生のころ、父に、学校で男子は「農業科」女子は「家庭科」をやるようになったと話したことがあった。

ほうれんそう_e0033229_18113545.jpgそして夏の終わりのころのこと、父は一握りの「マキビシ」のような種をもってきて、「ほうれん草の種だ、せんぜいの隅に蒔いて育ててみな」と言った。


父のアドバイスは、種を蒔く前に、土を耕して、たい肥をすきこんで、ほうれん草は酸性の土を嫌うから、かまどの灰をもってって土とよく混ぜてその後で種を蒔くんだ。

それだけだった。

言うとおりにして、水をかけておいた。

「いつ芽がでるか」と毎日のように見に行った。
「何日かすると、緑色の双葉が出て来た。
嬉しくなって、毎日水やりをした。

時にはかまどの灰を持って行って播いてやった。
納屋に、田圃に播いた肥料の残りがあったので、一掴み持って行って、播いたりもした。

父は「あんまり厚植えじゃ育ちが悪いから、ちっとうるぬいて風通しを良くしてやった方がいい」と教えてくれた。

自分でもびっくりするほどよく育った。
イメージ
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ある日、学校から帰ってきて、水をもってせんぜい畑に行くと・・・・。

あれ??、俺のホウレンソウがねぇ。

あわてて、家に行って母に聞くと・・・

「今日なぁ、街の八百屋が来て、あれを売ってくれっつうんだぃ、だから、あれは倅が一生懸命育てたやつだから、勝手に売るわけにゃぃいかねぇっつったんだけど、あんないいホウレンソウはなかなか手にへぇらねぇから、ぜひ売ってくれっつって、きかねぇんだ、しょうがねぇで、それじゃぁ、倅に怒られるかもしんねぇけど、その代り値ぇ良く買ってってくんなよ。っつって売っちゃったんだ」
という。

八百屋にそんなにほめられりゃぁ悪い気はしなかった私に母は、
お金はここに65円預かってる。と言って、あの頃の古い十円札と五円札をくれた。

父に話すと、「それはお前が一生懸命育てた報酬だ、大事に使いな」と言ってくれた。

あの頃の65円は中学生には大金だった。

土に埋もれながら育ったような群馬県生まれのホウレンソウを食って見て、そんなことを思い出した。

・・・・・・・・・・・・・・・・

文中の言葉解説

せんぜい畑・・・農家では売り物用の農作物も家で食べたが、特に売り物にするつもりはなく自家消費用に家の庭の隅や近くの畑に専用に作っていた。その畑を「せんぜい畑」といった。

ほうれんそう_e0033229_20535110.jpgマキビシ(撒き菱)・・・水草のヒシの実を乾燥したもので忍者が追っ手から逃れるために播いた。その上を歩くととげが足に刺さって歩けなくなるもの。

うるぬいて・・・間引きのことで、種を蒔くときは発芽の状態がわからないので種を厚く播いておくが、途中で育ちの悪いのもを間引いて元気な苗だけを育てる。

実は、両親の言葉はもっと群馬の方言で話していたが、分かりやすくするために共通語に近くした。





by yo-shi2005 | 2017-02-01 20:24 | 随想 | Trackback | Comments(0)
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